三菱一号館美術館『異端の奇才―ビアズリー展』へ行ってきました

 キモかわいい? 顔の表情とか、頭の形とか、体型とか、少し気味が悪いというかはっきり言って気持ち悪いのに、どこかおどけた感じがして可愛らしくもある、ビアズリーの作品にそんな印象を受けました。今回の展覧会はビアズリー作品とともに、ビアズリーやこの時代の関連作品や、オスカー・ワイルドの「サロメ」に焦点を当てたコーナーもある構成になっていて、そこがビアズリーの奇才を際立たせる見ごたえのある展覧会でした。

  

 私の作品鑑賞のポイントは「余白」。私がビアズリー作品の中で好きなところが、やはり「余白」です。余白と細の使い分けというのでしょうか。一つの作品の中に、細かなところと大胆に余白にしている部分が同時に存在していて、そのバランスが絶妙なのです。例えば、有名なところでいくと『サロメ』から2点。《サロメの化粧Ⅱ》、初めに描いたものは出版社に没にされ描きなおしたというこの作品、ドレスの胸元のレースはとても細やかに描かれているかと思えば、スカート部分はぐおーんとカーブで三角形が表現されています。2点目は植物はとても細かく描き、左に大きく余白をとって横たわる隊長や小姓を引き立たせている《プラトニックな嘆き》。この余白と細密の使い分けですよ。シンプルでいて大胆な構図がビアズリー作品の魅力の一つでしょう。

 宣伝ポスターも素敵でした。『イエローブック』の創刊号の宣伝ポスターなんて、シンプルだけど左側の女性のドレスがとても印象的。ちょっとロートレックを思わせる感じのポスターもまたよかったです。

 ビアズリーといえば『サロメ』。原作にない場面を描いてみたり、オスカー・ワイルドのスキャンダルに巻き込まれたり、「異端児で奇抜なキャラの変わり者」というイメージでした。今回の展覧会で有名な『サロメ』以外の作品にも触れてみて、単に気味が悪いというだけでなく「キモかわいい?」と感じてしまったのは、実は発想が異端なだけで、絵を描くことが好きでたまらないだけの純粋な青年だったのかもしれないと思ったからなのでした。

(図録の表紙が、書店でも販売されるものと展覧会限定の2種類があり、私は展覧会限定バージョンを購入してきました。)

三菱一号館美術館『異端の奇才―ビアズリー展』

会期:2025年2月15日(土)~5月11日(日)

美術

Posted by mocchi