兵庫県立美術館『藤田嗣治×国吉康雄 二人のパラレルキャリア―百年目の再会』へ行ってきました
藤田嗣治と国吉康雄、今まで同時に語られることはありませんでしたよね。正直、フジタのほうが有名だし、国吉のことはもちろん知ってはいましたけど、フジタほどの情報量は持っていませんでした。以前このブログで国吉の展覧会をご紹介しましたが、私が国吉に興味を持ったのはそこからです。もっと日本でフォーカスされてもいいのになぁと。あの時から、何となくフジタと通じるところがあると思ってはいました。年齢も近いし二人とも外国で大活躍した日本人。そして二人ともある意味祖国と決別した日本人。ただ、そういった事実だけではない、もっと深いところで通じているものがあるのではないかと思いました。

国吉はフジタ嫌っていた、というようなことを何かの本で読んだ気がしていました。不仲説はわりと広まっていたようです。その記憶が残っていて、私の国吉に関する知識も少なかったこともあり、「パリで成功したフジタがうらやましかったのかな」と思っていました。今は違うと思っています。だって国吉はアメリカで十分に認められていたし、うらやましがる必要はなかったのです。それでも国吉もパリに拠点を移そうとしたことがあったらしいです。言葉の問題などもあって断念したらしいですが、当時の美術の世界では芸術の都はやっぱりパリだったのですね。二人はただ出会う機会がなかった、それが本当に偶然でも、意図したことだとしても。そして、今回の展覧会で知って私がちょっと感動したことがありました。


国吉康雄、近藤赤彦、藤田嗣治、三画伯のコラボ作品が見つかったとのこと。国吉と近藤赤彦の牛ははっきり見えるのだけれど、フジタの描き込んだところだけが薄くなってしまって気づかなかったらしく、発見はつい最近だそうです。その薄くなったフジタが描いた部分が、これがまたフジタっぽくてエッジが効いているなぁと思いました。
そこで私はこうも考えたのです。二人が不仲というのは大げさな表現で、ただお互いをライバルとみなしていただけなのでは、と。ライバル=不仲、ではないはず。このコラボ作品は不仲説を否定するものとされていますが、そもそも不仲でもなんでもなく、たとえそんなに仲良しじゃなかったとしても大人の対応で一緒に絵を描いたとも受け取れるわけです。ただ、本人たち以外からすれば、「不仲説」というのは面白いネタになったのかもしれません。二人が多くを語っていないのでこういう話には尾ひれがつくもの、なのかなと思ったのでした。
似て非なる藤田嗣治と国吉康雄、二人の関係を想像するのも楽しかったのですが、なんといっても二大画伯の作品を同時に鑑賞できるというとても充実の展覧会でした。
似て非なる二人ですが、ポートレート写真、似ていませんか?

兵庫県立美術館『藤田嗣治×国吉康雄:二人のパラレル・キャリア―百年目の再会』
会期:2025年6月14日(土)~8月17日(日)(休館日:月曜日)