その作家の仕事を一度に観ることができる個展はもちろん楽しいです。今回の静岡県立美術館のように周年記念の展覧会は、いろいろなジャンルの所蔵品を観ることができるので、個展とは別の魅力があります。

「7つの扉」ということで、7つの章に分かれています。タイトルの「ひらく」には「美術館を紐解く」という意味もあるようです。何年も前の収集計画書などの展示もあり“オープン”だなぁと思いました。
印象に残ったものをいくつか挙げてみます。一つ目は絵馬です。絵馬といっても馬だけではないのですね。面白かったのは《人に鍵》というタイトルの付いた絵馬。人という漢字の中に箱型の鍵の絵が描かれています。芹沢銈介美術館の所蔵品だそうです。この絵馬は何の願掛けなのでしょうか。空き巣防止でしょうか。
そして、高橋由一や川村清雄の作品や額縁についてと続きます。さらに、ピサロやモネ、ヴラマンクの風景画があります。


静岡県立美術館といえば、伊藤若冲《樹花鳥獣図屏風》。枡目描きの技法も素晴らしいですし、何よりこの動物たちのかわいさ!アニメの世界です。白象を筆頭に愛らしいキャラクターたち。このキャラクター一つずつに物語が作れそうな気がします。桝目描きの凹凸の分析研究も興味深い展示でした。

さすが静岡と思うのが、富士山の作品がずらりと並んだところです。狩野探幽《富士山図》が2点。余白にとても味がある。私の大好きな余白。作家はどのような思いを込めてこの余白をつくるのでしょう。この余白は直観か、計算か。何を表現したかったのかを想像するのも面白いです。
富士山といえば横山大観《群青富士》。大観が描いた数点の富士山の中で、《群青富士》のブルーは素晴らしかった。富士山の雄姿、威厳、さらに清々しさをもあのブルーで表現されているように感じました。


最終章に近づくと現代美術です。草間彌生、河原温、具体の作品が並びます。収集の基準はもちろんあるのですが、幅の広いジャンルの作品と出会えて充実の展覧会でした。
静岡県立美術館で忘れてはならないのはロダン館です。素晴らしいロダン彫刻のコレクションです。これだけの数のロダン彫刻を一度に観ると少し怖くなります。大きいこともそうだし、動き出しそうなのもそうなのですが、それに加えて鬼気迫る迫力がありますね。圧倒されて写真撮影を失念してしまいました。

『開館40周年記念展 静岡県立美術館をひらく7つの扉』
会期:2026年4月25日(土)~6月21日(日)