国立新美術館「李禹煥展」へ行ってきました

2022-08-31

 直感現代アート鑑賞の第2弾は、李禹煥(リ・ウファン)です。アートの島で有名な瀬戸内海の直島にある李禹煥美術館(設計は安藤忠雄氏)へ行ったことがあります。その時受付の方に「李禹煥って知っていますか?」と聞かれました。私は正直に「お名前だけは」と答えました。すると「名前だけでも知っていればすごいですよ」と。あれから十数年が経ち、あの時出会った李禹煥作品に六本木で再会しました。

 ただ大きな石が置いてあるだけの作品があります。直島で初めて観た時の印象がとても強かったことを覚えています。静寂、だけど音がするのです。かっこつけて言ってしまうと”静寂という音がする“という感じ。どんな音かといわれると表現しづらいのですが。パワーストーンみたいな効果もあるのでしょうか。石を観ているだけなのに、不思議と心が落ち着いてくる気がしました。

 そうかと思うと、床にランダムに割られた石が敷き詰められていて、その上を歩くとカタカタと音がします。人によって歩幅やスピード、履いている靴も違いますから、音は人それぞれで違います。その時どれくらいの人がその作品の上を歩いているかによっても音の量が違ってきます。小石が敷き詰められた部屋もありました。こちらも同じ効果なのでしょう。小石の上を歩くたびにザクザクと音がします。鑑賞者がいろいろなパターンでここを歩くことで作品が完成するのだと思いました。なるほど、一種の体験型アートです。石の上を歩くので、この展覧会に行くときはスニーカーがお勧めです。

 野外展示の作品は開放感がありつつ、バックに都会のビルもみえるところに現代アートっぽさを感じました。

 《対話》と題されたシリーズは、湯呑のような形のものが、屏風のかたちのキャンバスに1つ描かれています。その両脇のキャンバスには、2つの湯呑と3つの湯呑がそれぞれ描かれていました。これは私が好きな勝手に想像するのに最適な作品です。対話とは湯呑と私たちなのか、それとも湯呑同士の対話なのか。対話というタイトルからして世間話というよりも議論かな、とか。こういう想像、連想、妄想は結構楽しいです。

  心が落ち着くような、ホッとするような、こういう展覧会に出会えた時は、今は特に大きなストレスもなく、日々の生活を楽しめていることに幸せを感じるのでした。

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥

会期:2022年8月10日(水)~11月7日(月)(休館日:火曜日)

【巡回展 兵庫県立美術館 会期:2022年12月13日(火)~2023年2月12日(日)】

美術

Posted by mocchi