DIC川村記念美術館と神奈川県立近代美術館の『マン・レイ展』へ行ってきました

2023-11-13

 今回は、マン・レイの展覧会が二つ同時期に開催されていました。どちらもマン・レイ芸術の魅力がたっぷり体感できる展覧会でした。

 まずは、DIC川村記念美術館『マン・レイのオブジェ』展です。

 私の中では、マン・レイ=「写真」でした。写真の作品は今までいろいろなところで観る機会があったので印象に残りやすかったのですが、いやいや、写真だけでなく絵画もオブジェも面白い。ご本人曰く写真家ではなく芸術家とのこと。それも納得しました。今回の展覧会は、タイトルのようにオブジェ作品にスポットが当てられています。ポスターにもなっている、メトロノームに目がついている作品はいくつも並べてある様子が不気味なようで、でもちょっとかわいらしくもある不思議なオブジェです。印象に残ったのは最後の展示室のオブジェたちでした。それまでの作品やセルフポートレート、彼の発言したことをみていると、攻撃的でいつも何かに闘いを挑んでいるような人だなぁ思ったのですが、最後の展示室のオブジェたちはとてもかわいらしい。チェスの駒は丸っこくておとぎの国にいるようだし、箒のオブジェのタイトルが《フランスのバレエ》もおしゃれ、《ブルーブレッド》は本物のフランスパンが青く塗られてしまったのかと思ったらブロンズでした。オリジナルは本物のバゲットに青い塗料が塗られているらしいです。芸術家ってホントに一面では語れないのですよね。

 続いて、神奈川県立近代美術館 葉山『マン・レイと女性たち』展です。こちらはマン・レイの作品の女性モデルたちが主役でした。とはいっても絵画もオブジェも展示されています。この展覧会では、マン・レイとその作品に影響を与えた女性たちにスポットが当てられているのと同時に、マン・レイの活動拠点ごとに展示が展開されているもの面白かったです。マン・レイ作品は恋をすることで成り立っていると思えるほど彼に影響を与えた女性たち。彼女たちなしでは芸術家マン・レイは存在できなかったのでしょう。印象に残ったのは、《時を超えた貴婦人たちのバラード》という版画集からの作品。かつて出会った女性たちの肖像だけでなく、未知の女性も入っているようなので、彼が理想としていた女性像やこれから出会いたい女性も含まれていたのかもしれません。

 マン・レイだけに焦点を当てて書くつもりでしたが、1展示室を使ったコレクション展が素晴らしかったのでこれだけはぜひ紹介させてください。内藤礼《すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している 2022》。とても小さな作品で、気を付けなければ踏んでしまったり引っかかってしまったりしそうです。展示室は自然光のみで鑑賞します。窓は一か所だけですが、とても大きな窓でそこから富士山が眺められます。それが素晴らしかった。とてもお天気の良い日に鑑賞できたこともあって、窓から少し下がって壁にある作品と床にある作品と富士山を同時に観たらとてもとても美しかったのです。どんな小さな作品なのかは、ぜひ実際に観に行っていただきたいです。

DIC川村記念美術館『マン・レイのオブジェ 日々是好物 いとしきものたち』

会期:2022年10月8日(土)~2023年1月15日(日)

神奈川県立近代美術館 葉山『マン・レイと女性たち』

会期:2022年10月22日(土)~2023年1月22日(日)

美術

Posted by mocchi