Bunkamura ザ・ミュージアム『マリー・ローランサンとモード』へ行ってきました

 淡い色、はかなげな女性、私はマリー・ローランサンの作品の薄く消え入りそうなこの感じが好きです。優しい色遣いとどこか謎めいている表情の女性たち、この不思議な雰囲気がローランサンの人気の秘密でしょうか。  

 作品は優しい色遣いがほとんどですが、ご本人はなかなかはっきりと主張する方だったようです。《マドモアゼル・シャネルの肖像》という作品のキャプションに、あるエピソードが紹介されています。あのココ・シャネルが、自分が成功した証に社交界で人気の画家ローランサンに肖像画を依頼しました。ところがシャネルは作品が気に入らず描きなおしを要求、ローランサンは譲歩せず、よってシャネルは受け取りを拒否。ローランサンはのちに「シャネルはいい子だけど、オーヴェルニュの田舎娘よ。あんな田舎娘に折れてやろうとは思わなかった」と語ったそうです。ある雑誌のシャネルの特集記事を読みました。私はシャネルの知的な雰囲気がよく描かれていて素敵だと思ったのですが、えてしてその人の特徴となる部分とは、自分ではウィークポイントと思いがち、本当はストロングポイントなのに。東洲斎写楽の大首絵でも似たエピソードがあったような。ローランサンはこんなことがあった後も、シャネルの帽子店には通っていたらしいですよ。仕事ぶりは認めていたのですね。おしゃれへの関心は別腹なのでしょう。

 ローランサンの作品のほとんどは背景に色があります。グレーの背景が多いように思いますが、時には森だったりカーテンだったりいろいろです。今回の展示の中で1点、背景がほとんど白い作品がありました。私は初めて観る作品です。よく見ると右下に波打っているような線が見えます。椅子に座っているようにも観えます。海辺でくつろぐ少女を描いているのでしょうか。帽子の黒が印象に残りました。

 エピローグには、ローランサンの色彩に着想を得てデザインされたドレスの展示があります。これがとっても素敵です。ローランサンの作品のイメージにぴったりの淡いピンクのロングドレス。シャネルのアーティスティックディレクターのカール・ラガーフェルドが2011年に発表したコレクションだそうです。現代にもローランサンとシャネルの“友情”が再現されたようにも思えて、さらにステキ度が増しました。

Bunkamura ザ・ミュージアム『マリー・ローランサンとモード』

会期:2023年2月14日(火)~4月9日(日)

美術

Posted by mocchi