栃木県立美術館『川島理一郎展ー描くことは即ち見ること』へ行っていきました

 ざっくり言ってしまうと、私の中では「フジタ(藤田嗣治)と一緒に古代ギリシアの生活を実践した人」という認識しかなく、画家であることは知っていましたが、その作品を観たことがあったのか、実は全く記憶にありません。今回は、私の記憶にそんな印象しかない川島理一郎の展覧会が開催されていると知って、「画家」としての川島理一郎を知る絶好の機会だと思い、栃木県立美術館へ行っていきました。

 遠くから見ても誰の作品かがわかる、独自のスタイルを確立した画家がいます。それこそ藤田嗣治はその一人。正直、川島理一郎はそういう画家ではないようです。フジタとの古代ギリシア風の共同生活はものすごく充実していたようで、絵日記には楽しそうなエピソードがびっしり書かれています。とても仲良しだったようなのでお互いに作風にも影響があったのかと思っていたのですが、共通点はあまり見えてきませんでした。フジタとの生活はあくまで「共同生活」であって、一緒に仕事をするための共同ではなかったのでしょう。パッと見て誰の作品かはわからなくても、素朴でやさしさを感じる作品が多いです。川島自身が理想としていたのは“上品さ”だったそうです。特に蘭を描いた作品今からはその”上品さ“がとてもよく伝わってきました。今までのざっくりな認識を申し訳なく思っています。

 私たちが現在見ることができる川島理一郎の作品は、彼が描いた作品のごくごく一部です。なぜならば、関東大震災と貨物船の沈没によって作品が200点以上喪失してしまっています。その作品が現存していればもっとその名が知られていてもよかったのかなと思いました。

栃木県立美術館『川島理一郎展―描くことは即ち見ること』

会期:2023年4月15日(土)~6月18日(日)(休館日:月曜日)

美術

Posted by mocchi