山種美術館『花・flower・華 2024』へ行ってきました

 花を観ていると私は本当に気持ちが落ち着きます。特にちょっとへこんでいる時に花を観ると元気を取り戻せた気分にしてくれます。生花も好きですが、日本画の花にも癒されます。日本画専門の山種美術館では、花をテーマにした展覧会が開催されています。

 

 どの作品も純粋な花の美しさだけでなく、観る人の心により深く残るよういい意味で演出がされているのだと思います。ここではリアルな花の絵が求められているのではなく、その作品を観た側が美しいと思ったりその作品をまた観たいと思ったりすれば、その作品は素晴らしい作品ということになるのだろうと私は思っています。毎回この美術館に訪れると思うことが、所蔵している作品の質が高いということ。本当にハイレベル。だってもう一度観たいと思う作品ばっかり展示しているのですよ。私の心にはど真ん中に直球で入ってきました。

 速水御舟《紅梅・白梅》の空間の絶妙さと白梅と月の位置、横山大観《寒椿》の椿と竹の配置のバランス、奥村土牛《木蓮》のつぼみから花びらが開いていく様子を異時同図のように表現されている感じ、感想を書き出したらキリがありません。そういえば私が挙げた3作品はどれも空間といいますか、主題の配置が素晴らしいなぁと思ったのです。なるほど、私はこういう作品が好きなのですね。今更ですが改めて気づきました(笑)。生花でも絵画でもそのほかどんなものでも良いものは心に響くし感動をくれるのです。花の配置、空間の絶妙さを観ていて、浮世絵の構図に驚いた西洋の画家たちのことを思いました。私のこの感動は、初めて浮世絵の構図を観た西洋の画家たちの感動や驚きと似ているのでしょうか。日本人が初めて洋画に触れ、遠近法を知ったとき時と同じような…いや、それはまたちょっと違う気がしますね。

 空間が有効に使われているシンプルな作品ばかりではなく、例えば梅原龍三郎《バラと密柑》のような華やかな作品もあります。これもまた花の華やかさが画面いっぱいにダイナミックに表現されている素敵な作品です。「花」と「華」、同じ読みでも漢字が違うとまた違った表現になります。私はこういう表現ができる日本語が大好きです。

 そしてやはり最後はcafé椿です。今回は、小林古径《桜花》をモチーフにした「花よりほかに」を桜の緑茶とともにいただきました。

 視覚、味覚、心の触覚を満たしてくれる、美術館好きにはたまらない幸せな時間を過ごすことができました。

山種美術館『花・flower・華 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―』

会期:2024年3月9日(土)~5月6日(月・振休)

美術

Posted by mocchi