諸橋近代美術館『生誕120周年 サルバトール・ダリー天才の秘密ー』へ行ってきました

 ダリの作品を観た時の私の第一印象は、好きか嫌いかは別として、謎、意味不明、不気味…とわりとネガティヴ寄りの言葉が並びます。言葉を変えれば永遠に挙げ続けられるのではないかと思えるくらい、いろいろな(ネガティヴ系の)単語が出てくる気がします。実はそこにダリが天才と言われる秘密があるのかもしれません。

 正直、ダリの作品に描かれていることを理解しようと思うのは私には無理と思っています。私には意味不明なことでも当のダリにとったらそれはもう語りつくせないほどの意味があるはずで、彼の作品の背景には生い立ちが関係しているようですが複雑な事柄が山のようにあって、それらを一つ一つ紐解いていくのは私の理解力をはるかに超えています。それでもダリの作品を観て、特にブロンズの作品は「美しい」と思いました。作品それ自体は不気味ですよ。体から引き出しが飛び出していたり、顔に蟻が這っていたり、時計が溶けていたり、象と白鳥が一体化されていたりしてよくわからないのに、曲線が「美しい」のです。溶けた時計のその溶け具合とか、女性(と思われる)のしなやかな腕や脚、角ばっているところもあるのに、曲線というか輪郭ですね、それをとても美しく感じたのです。それこそ謎ですよ、不気味なのにその曲線美に見入ってしまうのです。天才の作品ってこういうある種の矛盾が起こるのですよね。天才の作品として観るから魅せられるのではなく、私のように知識が無くても意味も分からず魅せられてしまう人々が大勢いる、そんな作品を創りだした作者は“天才”と呼ばれてしまうのかもしれません。「不気味、だけど美しい」、これが私のダリ評です。

 アジア随一といわれるダリ作品所蔵美術館である諸橋近代美術館、中世の馬小屋をイメージした建物が印象的です。磐梯山のふもとで景観もよく、立地が素晴らしいです。外観も館内の造りも、ダリの彫刻作品の魅力をより引き立たせる素敵な美術館です。

諸橋近代美術館

諸橋近代美術館『サルバトール・ダリ ―天才の秘密―』

会期:2024年4月20日(土)~9月1日(日)

【秋田展:秋田市立千秋美術館 2024年9月14日(土)~11月10日(日)】

【大分展:大分県立美術館 2024年11月22日(金)~2025年1月19日(日)】

【神奈川展:横須賀美術館 2025年2月8日(土)~4月6日(日)】

【広島展:広島県立美術館 2025年4月15日(火)~6月8日(日)】

美術

Posted by mocchi