神奈川県立近代美術館 鎌倉別館『鎌倉別館40周年記念  てあて まもり のこす 神奈川県立近代美術館の保存修復』へ行ってきました 

 「美術館とはどうあるべきか」、多くの美術館がこの課題に日々取り組んでいることでしょう。以前、ロンドンナショナルギャラリーの舞台裏にスポットライトを当てた映画を観たことがあります。そこには多くのスタッフが国民の宝である芸術作品をどんなテーマでどのようにみせるか、またそのために舞台裏では何が行われているのかのリアルを知ることができました。神奈川県立近代美術館 鎌倉別館での今回の展覧会は、当館の修復や保存の活動を垣間見ることができる、小規模ながらもかなり深い内容だと感じました。美術館の裏側を覗く機会はそう多くはありません。今回はその舞台裏が観れる貴重な展覧会です。

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

 鎌倉別館の展示室はとても小さいです。1フロア、歩いて一周するだけでしたら2分かかるかな。それでも展示の内容は充実していました。神奈川県立近代美術館が所蔵する作品を、「手当て」「守る」「残す」という3つのテーマに分けて展示しています。作品解説はありません。キャプションにはその作品がどのような修復過程をたどってきたのかの解説が書かれていました。展示作業中の事故で真っ二つに割れてしまったという松本竣介《工場》、再接着し、画面の洗浄もされて、今では修復されたことなど修復前の写真をよく見比べなければわかりません。高橋由一《江の島図》は、額縁が古く価値の高いものだそうです。そのため、オリジナルの額縁で観れるのは神奈川県立近代美術館でのみで、他館へ貸し出す時は貸出用の額縁が使われるのですって。

松本竣介《工場》1942年
高橋由一《江の島図》左:オリジナル 右:貸出用 

 イサムノグチ《こけし》は、2016年に惜しまれつつ閉館した旧鎌倉館から葉山館に移設され、その移設の様子を映像で観ることができます。板倉準三設計の旧鎌倉館の建築は、神奈川県から鶴岡八幡宮に譲渡され、今もその境内に残されています。これはきっと「てあて まもり のこす」という美術館の役割を鶴岡八幡宮が引き継いでくれたのだと思います。「てあて まもり のこす」、世界中の美術館に共通の課題だと思いますし、美術館に限らず当てはまることが世の中にはたくさんありそうです。なんだか良い言葉、ですね。

鶴岡八幡宮境内 神奈川県立近代美術館 旧鎌倉館

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館『鎌倉別館40周年記念 てあて まもり のこす 神奈川県立近代美術館の保存修復』

会期:2024年5月18日(土)~7月28日(日) (休館日:月曜日)

美術

Posted by mocchi