何必館 京都現代美術館『ロニスの愛したパリ WILLY RONIS展』へ行ってきました

  ウイリー・ロニスという写真家、実は知りませんでした。展覧会の概要を見てみると「アンリ・カルティエ=ブロッソン、ロベール・ドアノーなどと並ぶフランスを代表する世界的な写真家」とあります。私が写真展を観に行くことはあまりありません。私が知っているのは土門拳とロベール・ドアノーだけでした。写真展鑑賞としては初心者の私がたまたま何必館のHPの写真をちらりと観た時に「ドアノーに似てるなぁ」と思って目に留まったのです。それがこの展覧会を訪ねるきっかけになりました。図録によるとロニスとドアノーは友達だったようです。

 ロニスの作品からは、そこに写る人や街やすべてのものに愛情を持っていることが感じられます。人々の生活、生きている一瞬を捉えてシャッターを切るその瞬間は、作家の感性でもあると思います。

 ロニスはとてもパリを愛していたそうです。パリの建物、道、人々を含めた街を丸ごと愛していたのでしょう。その愛があるからこそ素敵な一瞬を見逃すことなくとらえることができたのだと思います。ただ単にいい作品を撮りたくてシャッターチャンスを狙ったというだけの作品ではないことが感じられます。だからこそそれを観る私たちに感動が伝わってくるのですね。被写体が人であろうと山であろうと車であろうと真剣に対峙していることがわかります。ロニスと交流のあった何必館館長の梶川芳友氏はロニスについて「真摯な生き方」と表現しています。なるほど、真摯なまなざしがレンズを通してこちらに伝わってきます。

 ロニスの言葉「戸外は舞台。偶然という名の演出がある。・・・」。かっこいい。偶然を演出と表現するセンスの良さ。さらに、シャッターチャンスのことを偶然がくれる贈り物と表現しています。かっこいい。そのあとに続く言葉もいい、「贈り物がとれなかったとしても次の贈り物があるから後悔はしない」と。こういったセンスの良さを持っているから心に残る瞬間をとらえることができるのかもしれません。

 図録に収録されている作品の中で《レアール市場の終了時、パリ》という作品があります。市場の女性が向かい側にいる男性に投げたカリフラワーのようなものが宙に浮いていて、カリフラワーが受け取り態勢で待ち構えている男性の手に収まる直前です。タイトルから市場が終了するところのようです。終了に間に合わせるために投げたのか、「終わりだから持っていきなよ」なのか、女性は後ろ姿、男性は真剣な表情をしています。クスっとさせるユーモアが感じられて、私の大好きな想像(妄想)力が掻き立てられました。

何必館 京都現代美術館『ロニスの愛したパリ WILLY RONIS展』

会期:2024年8月4日(日)~10月27日(日) (休館日:月曜日)

美術

Posted by mocchi