山種美術館「水のかたち ―《源平合戦図》から千住博の「滝」まで―」展へ行ってきました

 今年の夏は私にとって比較的過ごしやすい夏です。とはいえ気温が30度を超えればやっぱり暑い。気持ちだけも涼しくなろうと思い、水をテーマにした展覧会へ行って涼を取ろうと考えました。

 恵比寿駅から徒歩10分弱、渋谷区広尾にある山種美術館は、山種証券〔現在のSMBC日興証券〕創業者の山崎種二の個人コレクションを基に、昭和41年に開館しました。日本初の日本画専門美術館です。ここは私の大好きな美術館の一つです。

山種美術館

 今回の展覧会は海、川、滝など水に関するテーマごとに作品が展示されています。水といっても表現は一つではないし、色は青や水色だけではないのですね。千住博の「滝」が赤・黄・緑・紫で描かれていてもそれは滝に見えるわけです。石田武の《鳴門海峡》という作品は、1種類の岩絵具から濃度を変えた数種類の色を作り、素晴らしい渦巻の海峡を描き出しています。ただ滝を写し描く、海を写し描くというだけではなく、滝や海の何を描きたいのか、なのかなと思いました。千住博は色を使って滝の神聖さを描きたかったのかもしれないし、石田武は一色の絵具で海の荒々しい部分と穏やかな部分を描き分けたかったのかもしれない。こうやって絵の中身を勝手に想像するのも鑑賞の楽しみの一つですね。

 ここでぜひ紹介したい作品が、中村正義《日》。青い空に雪原。遠くに山並みが見え中央には冬枯れの木が数本、枝の隙間から太陽の光が差しています。しばらく観ていると、枯れ木に太陽の光、きれいな青い空に力強い生命力を感じました。一見寂しげな作品なのですが、実は希望に満ちた作品なのではないかと思ったのです。この展覧会を訪れたらぜひ観てほしい作品の一つです。

 さて、じっくりと作品を鑑賞した後はカフェで一息。実はこの美術館に来る最大の目的はこれだったりして。「カフェ椿」では作品をイメージした和菓子が提供されています。今回私が選んだのは、奥村土牛《鳴門》をイメージした『うず潮』という和菓子です。お茶とセットでいただきました。これがおいしいのです。カフェの席からみられる所蔵品を紹介している映像で、今回は展示されていない作品を観ることもできますし、山種美術館の歴史を知ることもできます。

 外は暑いけれど心は涼やかになった、充実した時間になりました。

 

「うず潮」

 

山種美術館 特別展 水のかたち ―《源平合戦図》から千住博の「滝」まで―

会期 2022年7月9日(土)~9月25日(日) (休館日:月曜日)

 

美術

Posted by mocchi